プレザングラン京都下鴨 創り手インタビュー 心豊かな日々を、景に移して
プレザングラン京都下鴨の設計を手がけた、株式会社IAO竹田設計の中川さん(左)と藤さん(右)に、建物に込めた想いや、この場所ならではの魅力についてお話を伺いました。
四季の景観と調和し、心豊かな日々を支える住まい。その設計に込められた哲学と創意をご紹介します。
風景を日常に取り込む設計

プレザングラン京都下鴨の設計を担った藤氏・中川氏は、初めて敷地を訪れた折、賀茂川と植物園が織りなす豊かな景観に深い感銘を受けたといいます。
京都らしい四季の趣と、穏やかに流れる時間が満ちるこの地は、人生の新たな章を紡ぐ住まいとして、唯一無二の価値を湛えていました。
素晴らしい景観に恵まれながらも、四方四周を道路に囲まれた、どこからでも建物が目に入る気の抜けない環境において、どのように景観と調和させるか。
その土地が持つ魅力を最大限に生かしながら、ここで暮らす方々が日々、いかなる風景と向き合い、心を寄せて過ごされるのか ―― その情景を想像することが、設計の核となりました。
藤:
もう、本当にいい場所やな、と。 周囲からの視線に配慮しつつも、建物を閉じるのではなく、むしろ景観にひらかれた佇まいにしたいと考えたのです。
周りの山と川の景色を、どのように日常の中で感じていただけるか。その視点がいちばんの出発点でした。

当初、設計は南向きの採光を重視した図面から始まりましたが、実際に現地に足を運び、周囲を丁寧に歩いてみたことで、計画は大きく方向を変えることになりました。
藤:
建設前の現地に足を運んで、建物のどこからどんな景色が見えるのかを一つひとつ確かめました。ここからは川の流れが見えるから、それをこの窓から見せたいな、とか。
3階に上がっていただくと山がスーっと抜けて見えるかな、とか。そして、また別の場所からは――(模型を指さしながら)北側には植物園があって、この景色が本当に素晴らしかった。
ただ、その風景は誰でも目にすることができるので、それとは別にここに入居される方だけの庭もつくりたいと思ったんです。
そうした想いが重なり、当初の図面からは180度、建物の向きを改める決断に至ったといいます。
京都の美意識を今の暮らしに

プレザングラン京都下鴨の設計のコンセプトは「下鴨モダンスタイル」。
伝統的な京都らしさを尊重しながらも、純然たる和の意匠にとどまらず、現代的な快適性と洗練を融合させる試みが随所に施されています。
たとえば、エントランスにはホテルのラウンジを想起させる開放的なティーカウンターを設え、入居者やご家族が自然に集い、穏やかなひとときを分かち合える場としました。
中川:
当初、エントランスには象徴的なものを設けることを念頭に置いていました。ケア21様のご要望としても、存在感のある空間が求められていたからです。
ただ、それだけにとどまらず、ここが人々の集いの場となり、お茶を愉しむ空間になることも自然に思い描いていました。
私の祖母も毎日のように友人とお茶を楽しむ姿が身近にあります。ここでも同じように、和やかなひとときが育まれていくのではないかと感じたのです。
エントランスを中心に据え、どのように空間をつくり込み、周囲に波及させていくかを何度も考えました。それはとても新鮮で、楽しい時間でもありました。
何度も検討を重ね、ひとつのテーマとしてたどり着いたのが『モダン茶室』でした。伝統的な茶室の意匠を少しだけ借りて、現代的に解釈しています。
たとえば床材の敷き方など、細部にさりげなく茶室の要素を取り入れました。お茶を楽しむ場としての親しみやすさと、エントランスとしての品格、そしてホテルライクな高級感。それらを一つの空間に調和させることを意識しました。
庭に宿る、四季と物語
プレザングラン京都下鴨の魅力は、何と言っても庭園の美しさにあります。
建物だけで敷地を満たすのではなく、あえて庭にゆとりを残す設計は、希少性を備えた贅沢な空間と言えますが、それと同時に、京都という特別な土地で庭を設計することには、やはり大きな緊張感があったといいます。
藤: 京都にお住まいの方々は、庭園文化への造詣と美意識がひときわ深く、正直なところ、恐縮する気持ちもありました。
その中で少しでも世界観に寄り添えるよう試みを重ねました。枯山水のように、石や緑の配置に水の流れを感じられるよう工夫を施しています。
お庭を歩くことで、遠出は難しくても、日々の中で小さな旅をするように四季を感じていただけるようにと願いを込めました。
また、この庭は季節の移ろいだけでなく、その日の天候や訪れる方の心持ちによっても異なる表情を見せます。
目にするたびにそっと心に余韻を残し、気持ちをほぐし、心に静かな余白をもたらしてくれる――そんな豊かな空間です。
吹き抜けが生む、空気とつながり
プレザングラン京都下鴨には、住まわれる方が、人の行き交う気配やふと耳に届く生活の音を、落ち着いた空気の中で暮らしの温もりとして感じられるように――そうしたイメージが空間の随所に息づいています。
中川:
吹き抜けがあることで、空間がぐっと潤沢になりますよね。
藤:
1階のエントランスから2階へと続く吹き抜けは、風が通り抜けて心地よいのはもちろんですが、“人の気配”を感じられることも魅力です。たとえば下のカフェカウンターで誰かがお茶を飲んでいたら、上にいる方も『私も行こうかな』と思うかもしれない。
そうした気配が自然に伝わることで、上下の空間がゆるやかにつながり、小さな交流が生まれる。そんな仕掛けも意識しました。実際に声もよく聞こえるので、空間がつながっている感覚が強いんです。
中川:
レストランは地下階にあるのですが、もし閉じた空間にしてしまうと、そこで関係性が分断されてしまう気がしていました。
吹き抜けがあることで、地上と地下がゆるやかにつながり、一体感が感じられる。そこが大きなポイントだと思います。
藤: 地下ですが、南向きのレストランなので、採光の面でもとても明るい空間になりました。最近、現場で足場が外れたところを皆で確認したんですが、想像以上に気持ちの良い場所になっていて嬉しかったですね(笑顔)
この場所、この眺めとともに
インタビューの最後、「設計する上で大切にしたことは何でしょうか?」という問いかけに対し、お二人はこのように答えてくださいました。
藤:
私たち設計士よりも、お住まいになる方の視点を一番大切にしています。建物が立ってから、長く暮らしを営むのは入居者様なので。だから、「住みたい」「心地よい」と感じてもらえるかどうかが大切かなと。
中川:
設計した建物をお使いになる方と共に作り上げていくこと。「お住まいになる方だったら」と、常に想像を巡らせることを大切にしています。
建物は完成しても、そこで営まれる暮らしはこれから始まります。
京都の文化や景観と響き合う住まいの中で、ご入居者様の日々が心豊かに紡がれていく。 そこには、風景とともに歩み続ける暮らしと、創り手の想いが静かに重なっています。
取材のご協力
株式会社IAO竹田設計
多様な建築実績と地域への深い理解をもとに、国際性・環境との調和・独創性を軸に据え、心豊かな暮らしを支える住まいを提案されています。
Webサイト:https://www.iao.co.jp/
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